夏祭りの夜店で金魚すくいを楽しんだ後、持ち帰り用のひも付きビニール袋に戦利品を入れた、かわいらしい図案の菓子箱です。
箱のふたを開けると、なんと絵だと思っていたビニール袋の部分が丸くくり抜かれています。
外ぶたの下にもうひとつふたが表れて、側面と共に金魚すくい用の水槽に見立てられています。
その中を涼し気に泳ぐ紅色の金魚。さらに、水草や楓葉、気泡なども描かれています。
くり抜かれた穴を裏から見ると、金魚をすくうポイのようにも見えます。
遊び心あふれる面白い菓子箱ですね。箱を開けていく過程が、夜祭の楽しい思い出を逆にたどっていくような仕掛けになっています。
そして、中からは、美味しそうなお菓子の金魚が登場です。
「金魚の涼(きんぎょのりょう)」葛羊羹製:清閑院
赤く染めた東雲羹で金魚をかたどり、気泡に見立てた錦玉羹とともに、薄緑色の葛羊羹の中に配した棹物菓子です。
東雲羹(しののめかん)とは、冷やした卵白に砂糖を加えながらよく泡立て、メレンゲを作り、これに羊羹を混ぜ合わせたものです。
葛羊羹とは、白餡と本葛、寒天、砂糖で作った羊羹のことです。
羊羹の中に柱状の透明な錦玉羹を入れ、切り分けた時に、錦玉の部分が抜けて見える仕掛けが流行りのようで、最近よく見かけます。
今回は気泡に見立てられていますが、素材と意匠が見事にはまった、みごとな着想ですよね。
白いお皿に盛り付けると、また違った雰囲気になります。
透明な穴を見ると、光を透過させてみたくなります。
泡の部分が仄白く浮かび上がって、とても幻想的ですね。
普通の羊羹ではなく、葛入りの羊羹なので、とてもさっぱりとしていて、涼やかな意匠とも相まり、暑い時期に嬉しい逸品となっています。