「宵風(よいかぜ)」焼皮製:鶴屋吉信
青と淡黄色にぼかし染めた焼皮を奉書包みのようにして小豆こし餡を包み、刷り込み技法で二羽の千鳥を描いたお菓子です。
日中の暑さを拭い取ってくれるような心地よい宵風が水面を揺らし、その上を千鳥たちがねぐらに向かって飛んでゆく、そんな夕暮れの水辺の光景が浮かびます。
千鳥は、俳句の世界では冬の季語になっていますが、かき氷屋さんの幡に描かれた千鳥文様の印象が強いので夏のイメージがありますね。
千鳥というのは鳥の種類ではなく、水辺に集うチドリ科の鳥の総称なので、いろいろな習性の鳥が含まれます。
夏に日本で繁殖し、冬になると南方へ渡る夏鳥、一年中日本で暮らす留鳥、渡りの途中に日本に寄って休憩する旅鳥など、さまざまで、特定の季節のみにみられる鳥ではありません。
焼皮特有のしっとりやわらかい生地に色素を加えると、日本画のぼかし技法のような芸術的な染め上がりになるのが素晴らしいですね。
お菓子から千鳥が飛び出してくるかのようないきいきとした刷り込みによる描写も秀逸です。