「夕蛍(ゆうぼたる)」きんとん製:鶴屋八幡
小豆つぶ餡のまわりに小豆こし餡のそぼろを植え付け、黄色く染めた錦玉羹をさいの目に切って散らしたお菓子です。
夕暮れ時に飛び交う蛍の光景を、風味豊かな小豆尽くしの餡と、黄水晶のように美しく輝く錦玉羹で見事に表現しています。
べったりとつぶし気味のそぼろからは、迫りくる暗闇の気配をも感じます。
「夏は夜。月のころはさらなり、闇もなほ、ほたるの多く飛びちがひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。」
『枕草子』の有名な一節が浮かんできます。
きんとんは写実には走らず、そぼろの色合いや太さの違い、組み合わせる素材のバリエーションによって様々な季節を表現するお菓子です。