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くず桜(みのや本店)

「くず桜(くずざくら)」葛製:みのや本店

葛粉と砂糖を水に溶かして火にかけ、半透明の半返しにして、小豆こし餡を包み、さらに蒸し上げると、透明な葛饅頭ができあがります。冷ました後、桜の青葉で包んだお菓子です。

 

 

葛の返し方には本返しと半返しの二つの方法があります。本返しの葛種は完全に透明で腰が出た状態であるのに対し、半返しの種は半透明で腰が弱い状態です。

 

ご家庭で作るときは本返しにして、餡を包んで終了です。プロは、半返しにして餡を包んだ後、さらにひと手間かけ、透明になるまで蒸し上げて完成させます。蒸しすぎると生地に割れ目が入り、餡が白っぽくなってしまうそうです。

 

 

それにしても、涼味あふれるお菓子を得るために、暑い夏に、火にかけて煉り上げたり、強火で蒸したりと、熱との戦いが欠かせないというのは何とも皮肉なお菓子ですね。

 

 

 

 

中国では、葛の饅頭のことを「水晶包子」というように、水晶にも例えられる透明な美しさが魅力です。

 

その透明感と桜の生葉のさわやかな緑が涼感を誘う「葛桜」は、夏の代表菓として、夏の季語にもなっています。

 

 

日本の四季を織り込んで作られる和菓子は、俳句の季語としてもよく登場します。

 

例えば、新年の季語として「菱葩餅」「花びら餅」。春には「うぐいす餅」「椿餅」「草餅」「桜餅」、夏は「柏餅」「葛餅」「葛饅頭」「葛桜」「水ようかん」、さらに秋には「栗羊羹」「栗蒸し羊羹」「栗鹿の子」、そして、冬は「蒸饅頭」「亥の子餅」「雪餅」など。

 

 

 

最後に、この一句を今日のお菓子に添えて。

 

葛ざくら濡れ葉に氷残りけり          渡辺水巴