「岩清水(いわしみず)」薯蕷製:豊島屋
腰高に丸くかたどった薯蕷饅頭の上に、二か所、明るい緑色に色付けし、その間に焼印で「流水文」を描いたお菓子です。
薯蕷饅頭に緑と言えば、有名な織部饅頭が浮かびますが、織部の緑は深い暗緑色なのに対し、このお菓子の緑はなんと軽やかで若々しい色でしょう。今の時季ならではの山野の新緑をさらに強調した鮮やかな緑が目に沁みます。
清水を写したお菓子は、透明感あふれる錦玉や葛で作られることが圧倒的に多いですが、薯蕷の純白でも表現できることを示したこの一品はとても貴重です。
「流水文」は、流れる水の様子を意匠化した文様で、平行線の端を屈折させてS字状に連ねた平行曲線が特徴です。
緑滴る夏山の岩間から、こんこんと湧き出てくる冷たい水。清浄な湧き水にしっとりと濡れた岩肌などが目に浮かんでくる逸品です。