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「龍月」さん

 

私の故郷の街もそうなのですが、地方都市の多くの駅前商店街は郊外型の大型量販店に客を奪われてしまい、ほとんどの店が廃業。8割方の店のシャッターは閉まったままという実にさびしい商店街になってしまっています。

 

そんな中、観音様で有名な大船にある仲通商店街は個性豊かで元気な個人商店がいっぱい。 

 

地元民のみならず、葉山などの鎌倉周辺住民たちも訪れ、いつもたくさんのお客さんで人通りが絶えません。

 

八百屋、魚屋、花屋など、長くこの地で活躍を続ける商店がひしめき、軒先では、かけ声が飛び交い、実に活気にあふれています。

 

ここへ来ると、私が子供の頃の、当時賑わっていた故郷の商店街を思い出します。

 

まるで、昭和時代にタイムスリップしたような感覚になるのです。

 

 

今日紹介する、私のお気に入りの和菓子屋さんはこの商店街にあります。

 

1957年創業の「龍月(りゅうげつ)」さん。 

 

 

 

以前は、田舎の古いお饅頭屋さんって感じの佇まいでしたが、最近改築されて建物は新しくなりました。


でも、売り場の雰囲気は昔のまま。飾り気のない簡素な造りからもわかるように値段も良心的。お店の人も気さくで、お菓子について積極的にアドバイスしてくれます。

 

先日行った時には、地元の学校の体験実習とかで、小学生が店番をしていたりと、地域密着型のお店です。

 

この店は上生菓子にも力を入れていて、種類はさほど多くはありませんが、季節ごとにいろいろな意匠のお菓子が登場します。 

 

上生を購入すると、「今日はお茶のお稽古ですか?」とか「希望のデザインがあったら、気軽に声をかけてくださいね、作りますよ!」とか温かい言葉をかけてくれます。

 

 

看板商品は「大船観音最中」。

 

地元の有名な観音様にちなんだお菓子です。

 

噂によると、大船観音寺で販売している観音様のミニチュアをもとに、最中種の型を作ったとか。

 

そのため、髪飾りや胸飾り、白衣のひだに至るまでリアルにかたどられています。

 

ちなみに、こちらが本物の観音様です。

 

中は小豆つぶ餡で、中心部に求肥が入っています。

 

風味豊かな自家製餡は安定した美味しさで、求肥が食感に変化を与えてくれるのも魅力です。

 

背中側には、「大船観音」と、銘が刻まれています。

 

 

 

上生菓子は三種類あり、すべて購入しました。

 

「ぼたん」煉切製:龍月

ピンクと白にぼかし染めた煉切で小豆こし餡を包み、牡丹をかたどった木型で押し抜いたお菓子です。中央のシベの部分は黄色く染めています。

 

花びらの筋模様から辺縁のギザギザに至るまで緻密に彫り込まれた木型が素晴らしいですね。

 

 

「落し文(おとしぶみ)」煉切製:龍月

緑色に染めた煉切を葉型に抜き、木型で葉脈を入れ、二つ折りにして小豆こし餡をはさんだお菓子です。白い煉切をまるめたものを添え、露に見立てています。

 

オトシブミ科の小甲虫が、クヌギ、ナラなどの葉を丸めて産卵し、それが地上に落ちた形をお菓子で表現しています。

 

 

 

 

「蛇籠(じゃかご)」薯蕷製:龍月

 

竹籠に石をつめて護岸用に岸にすえるのが蛇籠です。薯蕷饅頭でその姿を写したお菓子です。

 

小豆こし餡を入れ、楕円形にまとめ、蒸し上げたあと、緑色の織部釉を付け、焼印で網代を描いています。

 

 

 

 

これからシーズンの若鮎のお菓子も購入しました。

 

 

「あゆ焼(あゆやき)」:龍月

砂糖、卵、小麦粉、蜂蜜を混ぜた生地を鉄板で焼き、二つ折りにした中に短冊状の求肥を入れ鮎をかたどります。最後の仕上げに、焼印でヒレを描いたこの時季定番のお菓子です。