「翠の颯(みどりのかぜ)」道明寺羹製:俵屋吉富
葉をかたどった緑の羊羹を道明寺羹の中に配し、白小豆の粒入り抹茶羊羹の上にのせたお菓子です。
底の抹茶羊羹の中に、白小豆が所々白い円状に抜けて見えますが、地上に映った木漏れ日のようです。
道明寺の白いつぶつぶは、葉の間から差し込む陽光のきらめきのよう。
「緑の風」ではなく「翠の颯」という素敵な漢字が当てられた菓銘に注目してみましょう。
みどり色をあらわす漢字には3種類あります。
「緑」「翠」「碧」
「緑」は、いわゆる草木のみどり色、「碧」は、青みどり色、そして、「翠」は、メスのカワセミの羽根の色です。
このお菓子に使われているみどり色は、抹茶羊羹のみどりと、2種類の葉っぱのみどりがありますが、いずれも「翠」というより「緑」に近い色ですね。
羽かんむりを持つ「翠」からの連想で、2枚ずつきれいに配列された葉っぱが、鳥の羽のようにも見えてきました。
「颯爽と登場する」などと使われる「颯」という漢字の訓読みは「はやて」、音読みは「サツ」「ソウ」で「かぜ」という読み方はありませんが、敢えて「かぜ」と読ませています。
意味は、風がサッと吹くさまや、きびきびしたようすを表しています。
単に「風」というより、立へんを持つ「颯」の方がより動きを感じますね。
ひらひらと揺らめく葉、さわさわと擦れる葉音、ちらちらと煌めく木漏れ日などがイメージされます。
羽を持つ「翠」とともにお菓子に躍動感を与えてくれる素敵な銘ですね。
さっそく切り分けてみました。
逆光気味に光を当てると、道明寺の美しさが際立ちます。
素敵な菓銘、素敵な箱をまとったおすすめの逸品です。