梅雨時、各地の菖蒲園では、見事に咲きそろった花菖蒲を楽しむ人でにぎわいます。
端正な扇形に整えられたこのお菓子からは、山野の湿地に自生する野生の花菖蒲というより、人の手で丹念に栽培された公園の花菖蒲をイメージします。
「花菖蒲(はなしょうぶ)」錦玉製:三英堂
紫の煉切製の花と緑の羊羹製の葉、それに大納言小豆の甘煮を錦玉羹の中に入れ、淡雪羹の上に配し、扇形に固めたお菓子です。
小豆は、水辺に配置された形の良い庭石。その傍らで美しく咲く花菖蒲の光景が目に浮かぶようです。
よく整備された公園の池の底には真っ白い石が敷き詰められ、水面にかかるように咲く花菖蒲の影を映しています。
淡雪羹のやさしい食感と、錦玉羹の硬質な舌触りの違いが楽しめる味わい深い逸品です。