「玉川(たまがわ)」錦玉製:文銭堂本舗
煉切で作った色とりどりの玉を川底の小石に見立て、透明な錦玉の中に沈め、水面近くに二匹の若鮎を泳がせています。
若鮎たちが渓流に銀鱗を躍らせています。
違う方向から見ると、水中の景色が刻々と変化します。
「玉川」というのは歌枕(うたまくら)のひとつです。
歌枕とは、和歌の題材とされた日本の名所旧跡のことをさしていいます。貴族に親しまれてきた地名や崇敬される神社仏閣の地、歴史的な事件のあった場所など、いろいろな歌枕があります。
和菓子の名前としてよく使われる有名な歌枕としては、 以下のようなものがあります。
「小倉山(おぐらやま)」(京都の嵐山北西の山で紅葉の名所)
「広沢池(ひろさわのいけ)」(京都の嵯峨にある池で月見の名所)
「嵯峨/嵯峨野(さがの)」(京都の桂川の東沿岸あたりで平安貴族の別荘地)
「高雄/高尾(たかお)」(京都市右京区の山で紅葉の名所)
「竜田/竜田川(たつたがわ)」(奈良県の川で紅葉の名所)
「吉野(よしの)」(奈良県南部一体の地名で桜の名所)
「玉川」も夏の上生菓子の銘としてよく見かけますね。
歌枕として使用される「玉川」は日本全国には6か所もあり、あわせて六玉川(むたまがわ)と呼ばれます。
この中で一番有名な玉川は、現在では多摩川という表記で知られている東京都を流れる川ですね。
他にも、宮城県、滋賀県、京都府、大阪府、和歌山県にも玉川があるそうで、それぞれの地域の和菓子屋さんで作られる「玉川」のお菓子は、それぞれの地元で親しまれている玉川を写したお菓子ということになります。