青い楓を写したお菓子の銘は「青楓(あおかえで)」や「若楓(わかかえで)」、「青紅葉(あおもみじ)」と付けられるのが一般的です。
今日の菓銘はひとひねりあります。
「花楓(はなかえで)」こなし製:豊島屋
若葉色に染めたこなし生地を長方形に薄くのし、木型で押し、楓葉の形をつけ、小豆こし餡を巻き包んだお菓子です。
晩春になると楓は暗紅色をした地味な小花をひっそりと咲かせます。この花のことを「楓の花」「花楓」といいます。
この時季、青楓の鮮やかな緑にばかり目を奪われ、この素朴な花の存在に気づくことはまれですし、特別にこの花について取り上げられることもほとんどありません。
このお菓子の意匠にも、この花をイメージするような具体的な色や形はありません。
よって、「花楓」という銘は、「楓の花」というよりも、「花のように美しい楓」と、私は解釈しました。
花柄の美しい反物のように、一面、若々しい青楓の柄で埋め尽くされた光景をそのまま切り取ってきて餡を巻き包んだようなそんな想像をしてみました。