「蛤(はまぐり)」薯蕷製:塩野
薯蕷生地で小豆こし餡を包み、木型ではまぐりを型取り、蒸し上げた後、焼印で模様を付けたお菓子です。
雛祭りに欠かせないものと言えば、雛人形に菱餅、桃の花、白酒、雪洞(ぼんぼり)、雛あられなどいろいろ思い浮かびますが、はまぐりも忘れてはいけません。
はまぐりは、平安時代から伝わる「貝合せ」という遊びで使われました。これは、貝殻の色合いや形の美しさ、珍しさを競ったり、その貝を題材にした歌を詠んでその優劣を競い合ったりする貴族たちの遊びでした。
また、この貝合わせの貝殻を入れるふた付きの桶のことを「貝桶」といい、江戸時代には嫁入り道具の一つとされ、現在では雛飾りの調度品としてその形が残っています。
さらに、はまぐりのお吸い物は雛まつりの食べ物ともされていて、一対の貝が決して他の貝殻とは合わないことから、一夫一婦の教えにつながります。
昔は、生涯相手を変えないということが、女性にとって一番の幸せの一つとされたことから、はまぐりと雛祭りが結びついたといわれています。
お菓子の背景にある、由緒や謂れを知って食べると、さらにその味わいが深まりますね。