「歌舞伎と和菓子の出会い」コンテストの受賞作品を連日お届けしています。
準グランプリを受賞したのは次の二店です。
・千寿庵長崎屋(井上正和氏)
・清月堂本店(堀内誠氏)
千寿庵長崎屋さんは、長崎の和菓子店で、遠方のため、東京・歌舞伎座での販売はおこなわず、地元のみでの販売となっています。
清月堂本店さんは歌舞伎座に近い銀座のお店なので、歌舞伎座と店舗の両方で販売されていて、私は歌舞伎座で購入しました。
清月堂本店さんの意匠の特徴は、4種類のお菓子すべてに刷り込み技法を使っている点です。
刷り込み技法とは、渋紙と言われる耐水性のある紙に細工用ナイフで図案を切り抜き、その紙を菓子の上に押し当て、色素で染めた生地を起し金ですくいとり、紙の上からこすり付けるように引くと、図案が菓子面に写しとられるという技法です。
「勧進帳(かんじんちょう)」煉切製:清月堂本店
白、青、緑、橙、黄色にぼかし染めた煉切で小豆こし餡を包み成形し、その上に、勧進帳を読み上げる弁慶と相対する富樫左衛門の姿を描いています。
「断腸の思い(だんちょうのおもい)」羊羹製:清月堂本店
緑と白にぼかし染めた煉切生地を羊羹の上に貼り合わせ、松を背景に、杖で打たれる義経を描いています。
関所を通過する際、役人から疑いをかけられた時に、弁慶が義経を金剛杖で打ち据えるが、その時の弁慶の気持ちを銘にしています。
「弁慶の舞(べんけいのまい)」外郎・雪平製:清月堂本店
長方形にのした外郎生地と雪平生地を張り合わせ、二つ折りにして黄身餡を包み、刷り込みで扇を、肉桂粉付の押し型で瓢箪徳利を描き、金箔を散らしています。
富樫が弁慶に酒を振る舞い、その返礼として弁慶が舞をみせる場面を写しています。
「飛び六方(とびろっぽう)」羊羹製:清月堂本店
緑と黄の二色の羊羹を重ね、その上に白と紫にぼかし染めた煉切生地を貼り合わせ、弁慶の飛び六方を描いています。
陸奥の国へ向けて先発した義経一行の後を、弁慶が飛び六方で追いかけていく場面を表現しています。