「時雨きんとん(しぐれきんとん)」きんとん製:ちもと
餡のまわりに黒胡麻を混ぜ込んだ白いそぼろを付け、初冬のしぐれた空模様を表したお菓子です。
そぼろの清々しい白と、漆黒の胡麻のコントラストが、凛とした冬の空気感をうまく表現しています。
冬の初め、晴れていても急に雨雲が生じて、しばらく雨が降ったかと思うとすぐに止み、また降り出すことがある。これを時雨(しぐれ)といいます。
陰暦10月、つまり、いまの暦で言えば11月から12月の初めごろに最も多くみられる気象です。
山が近いほどよく見られる現象で、周りが山で囲まれた京都などでは、風物詩として知られ、「北山時雨」と京都の地名がついた言い方もあります。
また、一方が晴れているのに片方では時雨が降る「片時雨」や、夜にしぐれる「小夜時雨(さよしぐれ)」など、趣のある素敵な表現もあります。
さらに、時雨の音から派生した「松風時雨」「木の葉時雨」「蝉時雨」などもなかなか響きが良くて、耳に心地よい、いい言葉ですね。
時雨はその定めなさ・はかなさを趣として句に詠まれることも多いです。
もみぢ葉の 上に落ち来る 初時雨 人なき里にも 冬は訪ひ来る
(馬目成子)