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樹氷(榮久堂)

「樹氷(じゅひょう)」きんとん製:榮久堂 

つくね芋を練りこんだ薯蕷そぼろを小豆つぶ餡のまわりに植え付け、金箔を添え、樹氷を写したお菓子です。 

 

山芋の濃厚な香りが口いっぱいに広がり、なめらかなそぼろが、ふわり甘くとろける感触が最高な逸品です。 

 

樹氷と言えば、山形の蔵王が有名ですよね。3月5日まで「蔵王樹氷まつり」が開かれています。

 

 

木全体に粉砂糖をまぶしたような、いかにも美味しそうな樹氷の姿は、お菓子で表現するのにまさにうってつけの題材ですよね。 

 

 

きんとん製の上生菓子は、その抽象的な形のため、色合いの違いや、そぼろの太さ・長さに変化をつけることで四季折々の風物を描き分けますが、それでも見た目だけで何を表現しているのか当てるのは至難の業です。 

 

そこで重要になってくるのが、菓銘ですね。 

 

白一色のきんとんでも銘を変えることによって、いろいろなものに見立てられます。 

 

 

<卯の花に見立てたもの> 

 

「卯の花(うのはな)」きんとん製:森八 

日本の伝統色に「卯の花色」というのがあるように、古来より「白さ」を形容する言葉としても用いられてきた花ですが、その清爽な白さを前面に押し出した一品です。中は鮮やかな緑が美しいよもぎ餡。

 

 

<時雨に見立てたもの> 

 

「時雨きんとん(しぐれきんとん)」きんとん製:ちもと 

白いそぼろに黒胡麻を混ぜることにより、少し雰囲気を変え、初冬のしぐれた空模様を写しています。 そぼろの清々しい白と、漆黒の胡麻のコントラストが、凛とした冬の空気感をうまく表現していますね。 

 

 

<雪に見立てたもの> 

 

「雪の華(ゆきのはな)」きんとん製:東宮 

一番しっくりくるのはやはり、雪を写したものですね。つくね芋を蒸して裏ごしし、砂糖を加えそぼろ状にしたものを、小豆つぶ餡のまわりに植え付けたお菓子です。

 

 

「小原木(おはらぎ)」きんとん製:ちもと 

大原女が京都へ売りに来る薪(たきぎ)のことを小原木(大原木)といい、かまどで蒸して黒く作るのが特徴です。中の小豆餡を薪に見立て、そのまわりに白いそぼろを植え付け、雪に埋もれた薪を表したお菓子です。 

 

 

白いきんとんの素材としては、山芋(つくね芋)が使われることが多いですが、同じく白い素材として百合根を使ったものがあります。

 

「百合根きんとん(ゆりねきんとん)」きんとん製:龍月 

小倉餡のまわりに、白小豆と百合根をあわせた白きんとんを植え付け、大納言を一粒のせたお菓子です。

 

百合根特有の上品な色あいと、滑らかな舌触りが堪能できる逸品ですね。 百合根は高級素材で原価がかかることや、下ごしらえに手間がかかるため、百合根を使った上生菓子はとても貴重です。 

 

 

素敵な菓銘にいざなわれ、純白のきんとんが様々な風景に生まれ変わる上生菓子の世界にしばし浸ってみてください。