「都鳥(みやこどり)」煉切製:村上
水色と白にぼかし染めた煉切で餡を包みまるめます。さらに、布巾に包んで絞りながら形を整え、黒胡麻の目、肉桂粉のくちばしを加えて都鳥を写しています。
都鳥は、冬鳥、旅鳥として渡来し、古くから詩歌や文学に登場します。
『伊勢物語』の中で、在原業平(ありわらのなりひら)一行が隅田川から船に乗った時、鴫(しぎ)ほどの大きさの、白くてくちばしと脚が赤い鳥を見かけ、船頭に名前を尋ねたところ「都鳥」と答えたので「名にしおわば いざ事問はむ 都鳥 わが想う人は 在りや亡しやと」と詠むくだりがあります。
(現代語訳)
都という名を背に負っているならば、いざ質問しよう都鳥、“私が思う人はそこに健在でいるのかどうか“ と。
この都鳥はカモメ科のユリカモメのことです。
これとは別に、ミヤコドリ科の都鳥というのもあり、混同されやすいですが別物です。
いずれの都鳥も、くちばしと脚が赤いのは共通ですが、体色はまったく異なっていて、カモメ科の都鳥は全体的に白いのに対し、ミヤコドリ科の方は腹部以外は黒色です。
また、「都鳥=都の鳥」ということから、ユリカモメが1965年に東京都の鳥に指定されています。
ユリカモメ