「淡路潟(あわじがた)」薯蕷製:とらや
白の薯蕷饅頭に蛇籠(じゃかご)の文様と千鳥(ちどり)の焼印を配し、淡路島の海浜の風景を写しています。明治40年(1907)にはじめて創作されたお菓子です。
兵庫県の淡路島は、古くから千鳥とともにたびたび歌に詠まれてきました。 特に有名なのは、『百人一首』で知られる源兼昌の和歌です。
「淡路島 かよふ千鳥の鳴く声に いく夜寝ざめぬ 須磨の関守」
(淡路島の方から、海を越え、やってくる千鳥の哀しい泣き声に、いく晩、目を覚ましたことだろう・・・一人さびしく暮らす、須磨の関所の番人は。)
この歌は、須磨(現在の兵庫県)で寂しく暮らしたという、「源氏物語」の主人公、光源氏の気持ちになって詠んだものです。
蛇籠とは、蛇のように長く編んだ籠の中に石を詰め、川や水路に置いて、流れを堰き止めたり、方向を変えたりと、水流を制御するための道具です。
(出典:「がりつうしん」http://pub.ne.jp/gari2/)
蛇籠は水辺の風景を描く時に千鳥とともによく用いられる文様で、 蛇籠千鳥文(じゃかごちどりもん)として着物の柄としても人気ですね。
千鳥は水辺に住む小型の鳥で、群をなして飛びます。歌の世界では、冬の浜辺を象徴する鳥で、妻や友人を慕って鳴くもの寂しいものとされています。
このお菓子、千鳥と挽茶色の蛇籠文様の取り合わせがなんとも風雅で、薯蕷饅頭のデザインの中で私が最も気に入っているもののひとつです。