「蕪(かぶ)」求肥製:三英堂
ほんのり薄紅色にぼかし染めた求肥生地で白こし餡を包み、牛角状の形に整えます。緑色に染めた煉切を茎に見立てて上部のへこみに付け、蕪を写したお菓子です。
三英堂さんは昭和4年創業の島根県松江市にある老舗和菓子店です。
蕪は、代表的な冬野菜で、一般に、関東では「かぶ」、関西では「かぶら」と呼ばれています。
通常まんまるな形をしていますが、このお菓子の蕪は独特な形をしていますね。
これは地元松江市東部の津田地区で江戸時代から栽培されている「津田かぶ」を写したものなのです。
勾玉(まがたま)のように曲がった形が特徴で、中は白いのですが、表皮は上部が紅紫色で先にいくにしたがって白くなっています。
主に漬け物として利用されていて、出雲地方の冬のお漬け物の代名詞とし古くから愛されてきた蕪です。
栽培・収穫に大変手間がかかり収穫量も少ないため、県外で見ることはめったになく、“幻の漬物”とも言われているそうです。
このような地元の特産物を、地元の和菓子屋さんがお菓子の題材として取り上げ、敬意を表するとともに、認知度を高める働きをしているのは素晴らしいことですね。