「実柑(みかん)」煉切製:彩花苑
皮を少しだけむいて、果肉を見せる演出が見事です。
外見だけでなく、中身までリアルに再現されたこのみかんは次の手順で作ります。
まずは、中の果肉の部分から作ります。
橙色に染めた煉切で小豆こし餡を包みまるめ、へらで房を刻み、みかんの果肉に見立てます。
次に、皮を作ります。
みかんの果皮の内側にある、海綿状・繊維状の白い部分を白い煉切で表現します。
白と橙色の煉切をそれぞれ円形に平らにのばし、重ね合わせ皮に見立てます。
この皮を橙色側を外にして、先ほど作った果肉を包みこみまるめます。
次に、緑の煉切製のヘタをのせ、皮の一部をむいて、中の果肉を露出させます。
さらに、芸が細かいのが、顔を出した果肉の要所要所に白い細かいみじん粉を散らし、房の薄皮や甘皮まで丁寧に描いているところですね。
みかんの皮をむいた瞬間に立ちこめるあの甘酸っぱい香りまで漂ってきそうなリアルさです。
食べてみると、コクのある優しい餡の甘さが口一杯に広がるだけで、まったく酸味がないので、これまた見た目とのギャップに新鮮な驚きがあります。
家族の冬の団らんの場であるこたつの上に、本物のみかんと一緒に、密かに置いておきたいという悪戯心がもたげてくる逸品ですね!