「秋しぐれ(あきしぐれ)」求肥製:志むら
胡麻餡を求肥で包みまるめ、薄紅色に染めた落雁粉(らくがんこ)を全体にまぶし、さらに頂上に刻み胡麻を添えています。
単に「時雨(しぐれ)」といえば冬の季語になっていて、降ったかと思うと晴れ、やんだかと思うとまた降りだし、短時間で目まぐるしく変わる冬の初めの通り雨のことをいいます。
他の季節にもこの時雨に似た天気があり、それぞれ春時雨、夏時雨、秋時雨と呼んで区別します。
明るさのある春時雨や、爽やかな夏時雨と比べると、秋時雨はどうしても寂しさや侘しさを伴いますが、それがかえって味わい深い趣きを感じさせてくれます。
このお菓子は、時雨によって煙るように色づいた秋の山の風情を表しているようにみえます。
とてもやわらかい求肥生地の中から、胡麻餡の香ばしい香りと甘みがやさしく登場し、口中に広がる感覚が忘れられない逸品ですね。
それにしても、「時雨」と書いて「しぐれ」と読ませるこの言葉、私の大好きな美しい日本語のひとつです。聞くだけで目の前に風景が広がる古き良き日本の言葉ですね。