「色づき(いろづき)」煉切・鹿の子製:大倉山青柳
薄緑色、黄色、橙色などにぼかし染めた煉切を葉の形にかたどり、木型で葉脈をつけ、うぐいす豆の鹿の子を巻くようにはさんで、色づき始めた黄葉を写しています。
黄葉する葉の代表はいちょうですが、これ以外で、きれいな黄色に黄葉するものにはブナ、ナラ、クヌギ、ケヤキ、ユリノキ、カツラ、シラカバ、ポプラ、などがあります。
このお菓子の葉っぱは、その紡錘形の形からするとブナの葉でしょうか?
見る角度によって、姿がまったく違って見えるのも面白いですね。
それにしても、この葉の色のグラデーションの絶妙なこと!
油絵のような色彩の豊かさ、彫刻のような三次元的な精巧なデザイン、その両者をそなえたこのような上生菓子は、まさに立体絵画と呼ぶのに相応しいですね。
さらに深いのは、見た目だけで終わらないところで、食べ物であるからには味の追求も行わなければなりません。
つまり、和菓子職人さんは、画家的な感性と彫刻家的なセンス、それに料理人としての素養が最低限必要になります。
また、お茶菓子を作るからには茶道の心得も必要でしょうし、菓銘を付ける際には、日本や中国の古典文学、俳諧、伝統芸能、民俗学などの、幅広い知識が要求されます。さらに、菓銘を表記する場合も達筆に越したことはないので、書道の嗜みもあるとなおよいでしょう。
いろいろなお菓子を知れば知るほど、和菓子職人さんに対する尊敬と敬愛の念が深まっていきますね。