「林檎(りんご)」煉切製:菊家
赤・黄・薄紅色にぼかし染めた煉切でりんご餡を包みまるめ、頂上部を少しへこませ、羊羹製のヘタを添えてりんごを写しています。
晩秋の陽射しを受け、匂い立つようなりんごに見事に仕上がっています。愛らしい果実のみずみずしさ、 甘酸っぱさが感じられ、実においしそうです。
菊家さんのりんごは赤いだけでなく、いろいろな色が複雑に混ざりあった果皮の色彩が絶妙ですね。
りんごの皮の色づきは、紅葉と同じように、日光の当たり具合や気温などに左右されます。紫外線が多いほど赤くなり、気温が高過ぎても低すぎても赤みが薄くなるといいます。
秋を迎え、実が赤く色づき始める頃に「葉摘み」と呼ばれる作業が行われます。果実の周囲に繁る葉を摘むことで、果実全体に日光が当たるようになり、果実の表面がむらなく赤く色付くのです。
ところが、りんごの甘さは葉で作られたでんぷんが糖の一種に変わり、果実に運ばれ蓄積されて甘くなります。つまり葉を摘むという行為はりんごの味をわざと落とすことつながるのです。
そこで、色ムラはできてしまいますが、あえて葉摘みを行わず、美味しさを優先した「葉とらずりんご」というものがあります。
菊家さんのりんごは、この「葉とらずりんご」を写しているようです。
りんごの表面に残る葉の影の跡こそ、りんご本来が持つ美味しさのシンボルですね。
葉とらずりんご