「紫式部(むらさきしきぶ)」煉切製:三英堂
緑と白にぼかし染めた煉切で小豆こし餡を包み、茶巾絞り仕立てにし、羊羹製の紫の粒を添え、ムラサキシキブを写したお菓子です。
ムラサキシキブは秋に光沢のある紫色の小さな果実をつけます。たくさん枝分かれする細い枝に、紫色のつぶらな実が密についている様は、花のように美しいですよね。
花よりも、この艶(あで)やかな実の方が鑑賞の対象となっているため、俳句の世界では「紫式部」単独でムラサキシキブの実を指す季語になっています。
この気品ある実の美しさから、平安の才媛として誉れ高い「紫式部」に例えて名付けられたといわれており、おのずと『源氏物語』の雅な世界へと想いを誘われます。
実際は、下の写真のように多数の実が群らがるように付きますが、お菓子では抑制をきかせ、大小二個のみで表現しているのがポイントですね。
主役である実の、澄みきった紫の美しさがより際立つとともに、深まる秋の静けさをもこの実に凝縮されているように感じます。