「奥山(おくやま)」薯蕷製(小豆こしあん):豊島屋
淡い紅色に染めた薯蕷生地でこし餡を巻き包み、雄鹿の焼き印を押したお菓子です。
この上生の菓名と意匠を見て、百人一首の中のある有名な歌が思い浮かびました。
「奥山に 紅葉踏みわけ 鳴く鹿の
声きく時ぞ 秋は悲しき」
人の住む村里から遠く離れた、人の来ない山奥に、絢爛たる紅葉がびっしり敷きつめられたように散っている。
赤や黄色の絨毯のような情景の中から、紅葉を踏みながら鹿が現れる。角の長い雄の鹿が、天を仰いで一声寂しく高く鳴く。
おそらくどこへ行ったのか分からない連れ合いの雌の鹿を求めて鳴いているのだろう。その声を聞いていると、秋はなんて悲しい季節なのだろうと思えてくる。
こんな内容の歌です。
秋には、雄の鹿が雌を求めて鳴くとされており、そこに遠く離れた妻や恋人を恋い慕う感情を重ねています。
(百人一首講座より抜粋)