「新菊(しんきく)」煉切製:志むら
薄紅色を基調とし、一部分を白く染め分けた煉切で白こし餡を包み、菊花を彫り込んだ木型で抜いたお菓子です。
煉切やこなし生地で作るお菓子には、大きく分けて二つの製法があります。
竹べらや布巾などの小道具を利用して手づくりで成形していく「手形もの」 と、木型を使って「型抜き」して作る方法です。
この後者の方法で使う菓子木型を制作する専門の職人さんがいます。その技術は江戸時代から連綿と受け継がれてきたものですが、現在では全国でたった6、7人しかいないそうです。
「手形もの」のお菓子は、手作りならではのやわらかさや温か味がある反面、手作りゆえの製品のバラツキ(この不揃いがかえって趣にもなりますが)がでてしまいます。
これに対して、「型抜き」のお菓子は、製品の均一性は保ちやすいのですが、型抜きゆえの輪郭の明瞭なかっちりした姿は、いささか冷やかで硬いイメージになりがちです。
この「新菊」のお菓子は、型抜きにもかかわらず 、輪郭がとても繊細でやわらかく、曲線的な凹凸の質感もとてもやさしい雰囲気で素敵ですね。
淡い色あいともよく合っていますし、清らかな白餡との相性もぴったりです。
このような素晴らしい木型を作れる職人さんがどんどん減っているというのはほんとうに残念なことです。
木型職人さんに限らず、その道の達人と言われる職人さんが、後継者がなく、今まで守り繋いできた伝統技術がだんだん失われていくのはとても忍びないですよね。