私は上生菓子を買う際に、いつも次の三つの心得を実践するようにしています。
(1)できるだけ早い時間帯に行く。
(2)お菓子についての情報(製法、餡、素材、菓銘など)をできるだけ細かく尋ねる。
(3)同じお菓子が複数ある場合はよく見くらべて一番完成度の高いものを選ぶ。
しかし、前回、この(1)を守らなかったがために買えなかったお菓子がありました。
油断をして寝坊をしてしまい、開店時間より2時間遅れていったところ、すでに売り切れてしまっていたのです。
上生菓子は賞味期限が短いので、売れ残りを出さないようにお店は限られた数しか作りません。確実に買うためには開店とともに入店するくらいの覚悟でいかなければならないのです。
柏屋さんでは、毎月意匠を変えて6種類の上生菓子が出ます。ホームページ上でその詳細情報も見られるので、事前にチェックして、ある程度これとこれを買おうと決めていくのですが、前回はよりによって絶対ほしいと思っていたお菓子のみが売り切れていたのです。
話を聞いてみると、朝一番のお客さんがすべて買い占めていかれたとのことで、電車で1時間近くもかけて行った私はどっと疲れを感じました。
でも、そこまで人気のあるお菓子をベストに選んだ自分もなかなか目利きじゃないかと思うことでなんとか慰め、その日は第二候補のお菓子を買って帰りました。
そして、今回、再挑戦で、ようやく念願のお菓子を手に入れることができたのです。
「実り(みのり)」煉切製:柏屋
橙色と黄色にぼかし染めた煉切を平板に押して平らにし、巻くように栗餡を包み、緑の煉切製のヘタをのせたお菓子です。
柿の姿を模した包みの中に、栗餡が入っているという、秋の二大木の実が同時に味わえる贅沢な逸品です。
まるで山の神様が贈ってくれたプレゼントのようですね。
苦労して手に入れただけあって味わいもひとしおでした。
ちらりと顔をのぞかせる栗餡がほんとうに美味しそうです。