「鳴子(なるこ)」煉切製:菊家
一部分を緑色にぼかし染めた黄身餡生地で小豆こし餡を包み、稲穂を彫り込んだ木型で押し抜き、ところどころ焼き目を付けます。さらに、その上に煉切で作った鳴子をのせて完成です。
鳴子とは、実った穀物など、農作物を食い荒らす鳥や獣などを追払うための仕掛けのことです。
駒形の小さい板に細い竹管をいくつか糸で吊り並べたもので、これを長い縄の中途に掛け連ねて田畑に張り、一端を引っ張ることで竹管が板にぶつかって音が出る仕組みになっています。番をしながらこの縄を引っ張る役割の人を「鳴子守」というそうです。
図で描くと、鳴子はこういう形をしています。
(出典:私家版楽器事典http://saisaibatake.ame-zaiku.com/gakki/gakki_main.html)
実際に田畑に仕掛けられている様子はこんな感じです。
鳴子。狩野常信「鳴子稲田雀図(部分)」(出典:おじんの戯言 http://blogs.yahoo.co.jp/yosikoeirakusou )
澄みわたった秋空にカラカラと賑やかに響く鳴子の音が聞こえてきそうなお菓子です。
今ではもう見かけることもない、なんとも悠長で微笑ましい昔の仕掛けですが、動物を傷つけたり、自然を汚したりしない、環境に優しい装置ですね。
科学技術の進歩により、旧式な用具や装置はどんどん淘汰されていきますが、季節感があり郷愁を誘うこのような古き良き道具が、お菓子の形で残されているのはとても良いことだと思います。