「秋桜の小径(こすもすのこみち)」錦玉・羊羹製:鶴屋吉信
紅色、ピンク、白のこなし生地をコスモスの花型に抜き、錦玉の中に敷き詰め、挽茶羊羹の上に張り合わせた棹物菓子です。
可憐なコスモスが咲き乱れる、爽やかな高原の小径を、散歩しているような幸せな気分になれるお菓子ですね。
ねっとりしっとりした羊羹に、挽茶(ひきちゃ)ならではの匂やかな香りが加わり、さらにサクサクと歯切れのよい錦玉のなかから、もっちりとしたこなしの食感が登場してくるという、いろいろな楽しみが次から次へと絵巻物のように現れる贅沢な逸品です。
コスモスはメキシコ高原が原産のキク科の花で、ヨーロッパに渡ったのちにコスモスと名付けられました。
その語源は、ギリシャ語の「kosmos」に由来し、「秩序」「飾り」「美しい」など、いろいろな意味を含んでいます。
8枚ある花びらを律儀に写した「秩序」と、三色の花をバランスよく配した「飾り」が実に見事な「美しい」お菓子に仕上がっていますね。
秋に桜に似た花をつけることから、日本ではもっぱら「秋桜」と呼ばれていますが、メキシコ原産とは思えないほど日本の秋の風景にすっかり溶け込んでいます。
現代版「秋の七草」を選ぶとしたら、真っ先にこのコスモスを挙げたいところですね。