「秋語り(あきかたり)」煉切製:寿々木
黄色と茶色にぼかし染めた煉切生地を薄く伸ばし、小豆こし餡を芯にして筒状に巻き包みます。さらに、二本のすすきを三角べらを使って手技(てわざ)で描き、蜜で溶いた肉桂粉でその線をなぞっています。
すすきは、数本だけだと目立たない地味な草ですが、広々とした山野一面に大群落をつくって一斉に穂をなびかせている様子を見ると、その美しさには目を奪われてしまいますね。
上生菓子ですすきを表現する場合には、焼印を使い、線描画で表現することが多いですが、場合によっては、焼かずに練切などに押して、押し印として形を付けたり、色を付けてはんこを押すように柄をつけることもあります。
いずれにしても、焼印や型押しで大群落のすすきを表すのには無理がありますから、一本あるいは数本単位の意匠になってしまいます。
特注でオリジナルの焼印を作り、こだわりを見せているお店もありますが、どの位置に、どういう角度で押すかという、押し方によってもすすきの雰囲気が変わってしまいます。
シンプルなだけに結構表現が難しいようで、どの作品も苦労の跡がみられます。
寿々木さんの作品は、手技で一本一本線を描き、さらにご丁寧に肉桂粉でなぞっています。
日本人が心を寄せる秋の原風景ですから、職人さんには是非、頑張っていただき、いろいろな手法を駆使した見事な逸品を期待したいですね。