「すすき野(すすきの)」薯蕷製:豊島屋
小豆こし餡入りの薯蕷饅頭を天焼き(真上だけ焼く)し、焼印にてすすきの型を押したお菓子です。
すすきは、数本だけだと目立たない地味な草ですが、広々とした山野一面に大群落をつくり、一斉に穂をなびかせている様子を見ると、その美しさに目を奪われてしまいます。
上生菓子ですすきを表現する場合には、焼印で表現することが圧倒的に多いですね。
場合によっては、焼かずに練切などに押し当て、押し印として形を付けたり、色を付けてはんこを押すように描くこともあります。
いずれにしても、焼印や型押しだけですすき野原を表すのには限界がありますから、一本あるいは数本単位の意匠になってしまいます。
いろいろなお店のすすきを比べてみましょう。
「とらや」さん
穂が2つに、葉っぱが6枚もあり、今まで集めたすすきの焼印の中で一番豪華で大きさも最大です。
「庵月」さん
穂が1つに、交差する葉っぱが2枚の標準的な印です。
「清閑院」さん
なぜか向かって右方向に傾斜するすすきの意匠がほとんどですが、清閑院さんのものは珍しく左方向になびいています。
「鶴屋八幡」さん
上の3種類はいずれも鶴屋八幡さんのものですが、意匠が微妙に異なります。さすが老舗大手だけあって、ワンパターンにならないように、何種類も取り揃えています。
「龍月」さん
穂がひとつに葉が2枚。複数ある葉は交差させて描いたものが多いですが、龍月さんのは交差していません。
「三英堂」さん
輪郭がぼやけていて少しわかりにくいですが、穂が2つ、葉が4枚あるようです。
「金米堂」さん
通常、薯蕷饅頭に焼印を押すことが多いですが、金米堂さんのは、煉切生地に焼印を押しています。
「蜂の家」さん
焼かずに、煉切生地に型を押し当て、押し印として形を付けています。
「梅花亭」さん
肉桂粉を付けて、煉切生地に型押ししています。
「手毬」さん
ココアパウダーを付けてはんこを押すように描いているのが独特です。
「豊島屋」さん
一番上に掲載している同じ豊島屋さんの薯蕷饅頭の焼印とまったく同じ型ですが、こちらは焼印ではなく、こなし生地に押し印として形を付けています。
同じお店の同じ型でも、押す位置や角度の違い、焼印で押すか、押し印として押すかなど、押し方の違いによってもすすきの雰囲気が変わるのがおもしろいですね。