「松茸(まつたけ)」求肥製:大倉山青柳
求肥生地で柚子餡を包み、松茸をかたどり、笠(傘)の部分を羊羹液でコーティングし、軸の部分は所々に焼き目を入れ肉桂粉(シナモン)をまぶし、独特の模様をつけたお菓子です。
秋の味覚といえば、栗やぶどう、柿、秋刀魚などいろいろありますが、希少価値の点ではやはり松茸ははずせませんよね。
そんな松茸を、形、香り、味にこだわり和菓子で見事に表現した逸品です。
松茸の笠の形は、最初は球型ですが、次にまんじゅう型となり、時間が経つにつれて徐々に平らな形に開いていきます。このお菓子は和菓子だけに、まんじゅう型の状態を描いているようですね。
松茸の軸は褐色のササクレた繊維状の鱗片に覆われていますが、この鱗片の色合いや質感を焼き目や肉桂粉を駆使して見事に写しています。
松茸のあの独特の香りの主成分は研究により桂皮酸メチルだと解明されており、化学的に合成して、インスタントの松茸風味のお吸い物に使われています。
肉桂の香り成分も同じ桂皮酸の仲間なので、肉桂粉で松茸の香りを演出しているのはさすがですね。
松茸はシンプルに炭火で焼き、スダチ醤油をつけていただくのが最高に美味しいですが、スダチの近縁である柚子を餡に使っているのもグッドアイデアです。
本物の松茸は高嶺の花ですが、和菓子の松茸なら気軽に味わえるのがいいですね。