「月に雁(つきにかり)」求肥・羊羹製:田園調布あけぼの (2015年)
薄黄色に染めた求肥生地で小豆こし餡を包みまるめます。さらに、淡い紫色の背景に黄色い満月を描いた薄いシート状の羊羹をのせ、雁の形にくり抜いた羊羹を二羽添えたお菓子です。
中の黄色い求肥餅が、薄い羊羹越しに透けて丸く見えるような錯覚を覚えますが、羊羹の方にも黄色い色がついています。羊羹の細かく波打つようなひだが光を反射して、静かに流れる雲のように見えるのも趣がありますね。
冴え冴えと輝く満月に、たなびく紫の雲、そして二羽の雁。これだけ役者が揃えば素敵な物語が生まれそうです。
二羽の雁は夫婦でしょうか、雁は親子の絆が強く、いつも家族一緒に行動する鳥なので、この二羽の後ろに子供の雁が連なって飛んでいそうな気がします。
澄み渡った秋の空に、物悲しげな雁の声が聞こえてくるような臨場感あふれる逸品ですね。
ちなみにこちらは昨年の同銘のお菓子です。
「月に雁(つきにかり)」求肥・羊羹製:田園調布あけぼの (2014年)
羊羹生地を巻く方向(縦巻/横巻)の違い、雁の数の違い、餡の違い(2014年は黄身餡)など、田園調布あけぼのさんのお菓子は年によって微妙に異なる意匠や味の変化を楽しめるのがいいですね。