「初雁(はつかり)」薯蕷製:豊島屋
小豆こし餡入りの真っ白な薯蕷饅頭を天焼きし、雁の焼印を押したお菓子です。
冴え冴えと輝く晩秋の月に見立てた、まん丸の薯蕷饅頭。美しい月には目もくれず、家路を急ぐ二羽の雁。シンプルですが味わい深い逸品ですね。
雁は、秋に渡来し、春に飛び立っていく渡り鳥です。
グァーンとも、クワワン、グアアアとも表現される、その哀愁を帯びた鳴き声は、「雁が音(かりがね)」と呼ばれ、親しまれています。
季節の移り変わりを示す鳥であると同時に、列をなして群れ飛ぶ様は美しく、古来より歌に詠まれ、絵画に描かれてきました。
上生菓子の世界でも、この時季、よく題材として用いられます。
今日はいろいろな雁のお菓子をお楽しみください。
「秋月(しゅうげつ)」焼皮製:鶴屋吉信
「初雁(はつかり)」薯蕷製:とらや
「初雁(はつかり)」煉切製:蜂の家
「雁(かり)」薯蕷製:江戸家
「月明り(つきあかり)」錦玉製:一炉庵
「雁渡し(かりわたし)」焼皮製:鶴屋八幡
「初雁(はつかり)」煉切製:森八
「月に雁(つきにかり)」求肥・羊羹製:田園調布あけぼの
どのお菓子からも、澄み渡った秋の空の中、物悲しげな雁の声が聞こえてくるようですね。