「栗ぼたん(くりぼたん)」:塩瀬総本家
小麦粉、卵、砂糖を配合した中花種(ちゅうかだね)を、厚い銅板(平鍋・一文字器)の上で円形に広げて焼き上げた生地で、栗の甘露煮と小豆つぶ餡を包み、球状にまるめたお菓子です。
説明が難しくなりましたが、簡単に言うと、どら焼きの場合、普通、二枚の生地で餡をはさんで作りますが、二枚ではなく、一枚だけの生地で餡を包みまるめたものです。
つまり、「どら焼きの生地で包まれた栗饅頭」、または、「球体栗どらやき」といったところでしょうか。
全体の形が、ほころび始めた牡丹の花に似ているため、「栗ぼたん」と命名されています。
生地をまるめた時にできるひび割れの様子は、黄身しぐれにも似ていますね。茶色い焼き色の間から、ところどころ割れて見える黄色の色合いは、まさに秋色といった感じです。
ふんわり、しっとりやわらかい生地の食感と、中に収められた一粒丸ごとの栗の風味、小豆の香り豊かな粒あんの素朴な甘みが、バランスよく見事に結集したお菓子です。
650年の歴史を誇る和菓子の老舗「塩瀬総本家」さんですが、格調高い御上生菓子以外にも、このようなほのぼの系のお菓子なんかもあって、気軽に伝統の自家製餡を味わえるのもいいですね。