「玉蜀黍(とうもろこし)」こなし製:豊島屋
黄色に染めたこなしで小豆こし餡を包み丸め、とうもろこしの粒々の形を木型で押し、バーナーで焼き目を付けたお菓子です。
きれいな空気の中で、太陽のエネルギーを一杯に受けて育ったとうもろこしの鮮やかな黄色は、真夏の太陽の日差しがぎゅっと濃縮された色に見えます。
まるで石畳のように律儀に整列したひとつひとつの粒の様子もみごとに描写されていますね。
とうもろこしを写した上生菓子は豊島屋さんの専売特許です。
ほかのお店でこの主題のお菓子は見たことありませんが、豊島屋さんではほぼ毎年この時期になると登場します。
しかも、毎回同じ仕様ではなく、製法や色合い、餡などを微妙に変えて出してきます。
その変遷をたどってみましょう。
「玉蜀黍(とうもろこし)」外郎製:豊島屋(2014年)
この年は、外郎生地で、きな粉をまぶして焦げ目を表現していました。外郎生地だと粒だちがあまりよくないですね。
「玉蜀黍(とうもろこし)」こなし製:豊島屋(2015年)
この年は、こなし生地で、中は白小豆こし餡になっています。バーナーであぶって実際に焦げ目をつけているのでとてもリアルです。
「玉蜀黍(とうもろこし)」こなし製:豊島屋(2017年)
今年は、中が小豆こし餡に変わった以外は、ほぼ2015年と同じ意匠です。黄色い色合いがさらに鮮やかになっているのと、焦げ目がやや控えめになっています。
同じ主題、同じ菓銘 のお菓子でも、年によって微妙に意匠や製法を変え、飽きさせない工夫をしたり、技術を進化させ完成度をさらに高めていく職人さんの探求心、向上心に敬意を表したいですね。