「満ちる月(みちるつき)」羊羹製:とらや
満月が山の稜線をなぞるように空に昇る様子を表現した羊羹です。
透明感のある月は羊羹が丸くくり抜かれたようになっていて、そこに琥珀羹がはめこまれています。夜空は小豆を使った煉羊羹、山は白餡を緑色に染めて作った煉羊羹で表現されています。
真横から見ると、月の部分がきれいに丸く抜けて見えます。
2011年に開催された虎屋文庫展「和菓子を作る 職人の世界」にちなんだ創作棹菓子コンテストで、みごと一位に輝いたのがこの作品です。
とらや御殿場工場の職人さんが創作したそうです。
裏側から光を当てると、満月がリアルに輝いて見えます。
お月見といえば、旧暦8月15日の中秋の名月(十五夜の月)が真っ先に思い浮かびますが、旧暦9月13日にもお月見をします。これを後の月見(のちのつきみ)または十三夜といいます。
十五夜の月見は中国から伝わったものですが、この十三夜の月見は日本固有の風習だそうで、満月に少し届かない微妙な形の月にも情緒を見いだす感覚は、日本人ならではの美意識ですね。
このお菓子、やや斜めから角度を変えて見ると少し月が欠けたように見えます。まさに十三夜の月のようですね。
十五夜と十三夜のどちらか片方しか月見をしないことを、「片見月」とか「片月見」といって、昔の人は忌み嫌ったそうです。
このお菓子は、どちらの月も味わえる贅沢な逸品ですね。