「初秋(はつあき)」きんとん製:鶴屋吉信
緑色に染めたそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植え付けます。さらに、紫色と透明な錦玉をさいの目状に切って散らし、朝露に濡れる桔梗を写したお菓子です。
この時季、桔梗を写した上生菓子をよく見かけます。その多くは特徴的な五弁花を手技で写実的にかたどったものです。
今回のお菓子のように、ここまで大胆にデフォルメされたものは珍しいですね。
私が最初にこのお菓子を見かけた時は、てっきり露草を表しているものだと思い込み、すでによく似た意匠のものを収集済みだったので買わずにいました。
その何日か後に、鶴屋吉信さんのホームページをなにげなく眺めていた時、このお菓子が桔梗を表したものだと知り、慌てて買いに走った次第です。
桔梗の花びらの美しい色素が雫に溶け込んだような紫色の錦玉がこのお菓子の主役です。
瑞々しいきんとんの緑色といい、紫水晶(アメジスト)のような神秘的な輝きといい、初秋の朝の澄み切った空気感を見事に表現していますね。