「錦秋 (きんしゅう)」こなし・羊羹製:豊島屋
白と薄緑色の2色の羊羹の上に緑、黄色、橙色、紅色にぼかし染めたこなし生地をのせ、一面にとんぼの型を押し、秋の空に飛び群れる赤とんぼを写した棹物菓子です。
菓銘にある「錦」とは、綸子(りんず)の地に、金糸銀糸や彩糸を織り込んだ華麗な織物のことで、しばしば紅葉の美しさに並び称されます。
緑から紅色へと見事に変化するこなしのグラデーションは木の葉の色の移り変わりを表現しているようですね。
時の経過とともに刻々と色合いを変えていく風景を背に、生き生きと飛び交うとんぼの姿が目に浮かびます。
そのからだの色を塗りつけるかのように、夏の青さを、秋らしい赤に変えていく赤とんぼは、さながら秋の使者のようですね。
また、黄金色に実った稲穂の波の上を楽しそうに飛んでいる姿や、夕陽に染まった空をしみじみと名残り惜しそうに飛んでいる姿にも見えたりと、イマジネーションが大いに刺激されます。