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露草総集編

 

露草は、田舎に行くとよく見かける雑草ですが、その飾り気のない素朴な美しさには惹かれるものがありますね。

 

開花期は7〜9月と、まだ暑いさ中から咲き始めますが、俳句の世界では秋の季語になっています。 

 

今日はきんとん製で描かれた露草のお菓子をいろいろ集めてみました。お店による違いをお楽しみください。

 

「露草(つゆくさ)」きんとん製:竹隆庵岡埜 

 

緑色に染めたそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植え付け、さいの目に切った錦玉を散らしています。 

 

主役となる花の姿はあえて描かず、露草の語源となった草に結んだ朝露をそのままお菓子にしたような意匠が面白いですね。

 

 

「露草(つゆくさ)」きんとん製:東宮 

 

水色と白に染め分けたそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植えつけ、小さなさいの目に切った透明な錦玉の露を散らしています。

 

露草の花色は、咲く時期や個体差によって微妙に異なり、水色、青色、青紫色、薄紫色など様々です。

 

日本の伝統色のなかには露草色というのがあり、露草の花の汁を摺り付けて染めた色のことで、このお菓子の色に近い明るい青色です。

 

 

「つゆ草(つゆくさ)」きんとん製:しげた 
緑色に染めたそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植え付け、その上に青と白に染めたそぼろをのせ、さいの目の錦玉を散らしています。 

花の鮮やかな青色から「青花(あおばな)」とも呼ばれる通り、青いそぼろの色が印象的なお菓子ですね。

 

 

「紫露草(むらさきつゆくさ)」きんとん製:豊島屋(2015年) 

 

紫色と白にぼかし染めたそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植えつけています。 

 

青い花を咲かせる露草ではなく、同じツユクサ科で紫色の花を咲かせる紫露草を写しています。 

 

 

「紫露草(むらさきつゆくさ)」きんとん製:豊島屋(2016年) 

 

緑色に染めたそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植え付け、その上に紫色に染めたきめの細かいそぼろを所々にのせています。 

 

豊島屋さんは、同じ露草がテーマでも年によって意匠をガラリと変えてくるので毎回楽しみです。

 

 

「つゆくさ」きんとん製:鶴屋吉信 

 

緑に染めたそぼろを小豆つぶ餡の周りに植え付け、ハート形の露草の花とそぼろのシベを添え、露に見立てたさいの目状の錦玉を散らしたお菓子です。 

 

別名「蛍草(ほたるぐさ)」とも呼ばれるように、花びらが蛍の虫体、黄色いシベの部分がお尻で光っている蛍光のようにもみえる意匠ですね。

 

 

「露草(つゆくさ)」きんとん製:三鈴 

 

淡緑色に染めたそぼろを小豆つぶ餡のまわりに植え付け、水色に染めた錦玉のさいの目を配しています。

 

花色が衣に着きやすいので「着き草(つきくさ)」という別名があるように、まるで花色が透明な露に移ったかのような意匠が楽しいですね。 

 

 

「つゆ草(つゆくさ)」きんとん製:栗山 

 

緑と白に染め分けたそぼろを餡の周りに植え付け、ハート形の露草の花、黄色いしべを添え、露に見立てたさいの目状の錦玉を散らしています。

 

露草を写した上生菓子の中で、私が一番気に入っているのがこの栗山さんの逸品です。

 

「栗山グリーン」と私が勝手に呼んでいる栗山さんならではの清々しい緑が露草をより一層引き立てているようです。

 

 

 

どのお菓子のそぼろもとても口どけがよく、ほのかな甘さのみを残し、さらりと消え去る様は、一日でしぼんでしまう露草の儚さそのものという感じでしたね。