「夕なぎ(ゆうなぎ)」羊羹・錦玉製:鶴屋吉信
小倉羊羹の上に錦玉羹をのせ、その中にこなし生地で波とかもめを描いた棹物菓子です。
海岸地方の風は、昼間は海から陸へ吹き、夜はその反対の向きとなります。
夕方に、昼夜の風向きが入れ替わる時、それまで吹いていた風がぴたりと止み、一時的に無風状態になることを「夕なぎ」といいます。
夏は海水の温度が下がりにくく、とりわけ長く夕なぎが続くため、俳句の世界では夏の季語になっています。
静かに、おだやかに移りゆく夕なぎに、大らかに、なめらかに広がる海原。
沖合いはるかには、海鳥たちが、夏の一日を名残り惜しむように、ゆったりと舞い戯れています。
夕なぎは波こそ見えねはるばると 沖のかもめの立居のみして
兼好法師(兼好法師家集)