「宵花火(よいはなび)」外郎製:鶴屋吉信
紫色に染めた外郎生地で袖型に黒漉し餡を巻き、表面に色砂糖で花火を描いています。
日が暮れだして、群青の色が残る宵の空に打ち上げられた花火の情景を見事に写しています。
鶴屋吉信のこの独特の灰色がかった青紫色、私は個人的に”吉信パープル”と呼んでいるのですが、このお店の代表色ですね。
七夕の人気菓子「星願い」にも同じ色が使われていました。
日本の伝統色でいうなら、「薄鼠(うすねず)」に近い色でしょうか?
(出典:https://www.colordic.org/colorsample/2055.html)
この紫色の生地に透けて、中の漉し餡の黒が合わさると、さらに色合いが変化し、まさに菓銘にある「宵」の空の表情を見事に描き出していますね。
夕方、日が暮れていく様は、夕、夕刻、夕暮れ、夕闇、日暮れ、日の入り、日没、黄昏、薄暮、暮れ方、宵の口など、いろいろな日本語の表現があります。
その中で「宵」は、太陽が沈んだ後、まだ空が瑠璃色に染まっている頃をいいます。
仄かに蒼味の残る夜空に打ち上げられた大輪の花火。
華やかに彩られたこの花火が主役であることは間違いないのですが、その美しさもさることながら、その背景に、この外郎生地の芸術的な色合いがあってこそ引き立つものでしょうね。