「夏床几(なつしょうぎ)」外郎製:鶴屋吉信
ブルーと薄緑色にぼかし染めた外郎生地で白こし餡を包みまるめ、上面に軽く焼き目を付けます。さらに、表面に刷り込み技法で風鈴を描き、柄に見立てた蜜煮のゴボウを挿して団扇(うちわ)を写したお菓子です。
団扇の柄の部分は黒文字や竹串などで代用されることが多いですが、ゴボウだと無駄なくすべて食べられるのがいいですよね。
湿度が高く蒸し暑い日本の夏、現代人はエアコンに頼りきっていますが、冷房装置のなかった昔の人々は、少しでも涼しく過ごすための様々な工夫をしていました。
涼を得るための最も手軽でエコな道具は、竹の骨と紙だけでできた団扇ですね。
また、軒先には葦簀(よしず)、窓には簾(すだれ)をかけ、庭や道には打ち水をして、通り抜ける風を冷やします。
竹やイグサなどひんやりとした肌触りの自然素材をつかった日用品を使い、また、風鈴を吊るし風に吹かれて奏でる涼やかな音を楽しんだりもします。
そして、日中の暑さも和らいできた夕暮れ時には、庭先に床几台と呼ばれる木製の簡易ベンチを出して家族が集まり、スイカを食べたり、線香花火をしたり、星を眺めたりして、涼をとりながら、団欒を楽しむ「夕涼み」もよくやったものです。