「夏小菊(なつこぎく)」煉切製:いづみや
ピンク色に染めた煉切で小豆こし餡を包み丸め、その上に手技にて小菊をかたどったお菓子です。中央には黄色の煉切で作った花芯を配しています。
煉切製の上生菓子は大きく分けて二種類あります。
竹べらや布巾などの小道具を利用して手づくり(手技:てわざ)で成形していく「手形もの」 と、いろいろな形に彫刻した木型を使って、押し抜いて作る「型抜き」です。
菊の上生菓子の醍醐味は、型抜きよりも、花びら一枚一枚を手技で丁寧につくり上げる手形ものにこそあるように思います。
日本の旅券の表紙に表示されている菊の紋章と同じ16弁の花びらが、ヘラを使って精巧に作り上げられていますね。
光源の位置や見る角度を変えると、また違った雰囲気になります。
「菊」といえば秋を代表する花で、俳句の世界では秋の季語になっていますが、それより早い季節に咲く「夏菊」や、秋菊より遅い季節に咲く「寒菊」などもあります。
蒸し暑い夏は、服も軽装になり、食べ物も薄味のあっさり、さっぱりした物が好まれます。
この時期に咲く夏菊はそうした日本人の心を察しているのか、花は小ぶりで、香りもうすく、すっきりとした印象のものが多いのが面白いですね。