「氷室(ひむろ)」錦玉製:大倉山青柳
耐水性のある紙で白こし餡と半錦玉羹を茶巾絞り仕立てにして固め、オブラートの粉末を散らしたお菓子です。
半錦玉羹(はんきんぎょくかん)とは、寒天に砂糖、水、水あめ、若干の白あんを加えて煉った半透明の錦玉羹です。
普通、上生菓子でキラキラした輝きを描写するときには、氷餅を散らすことが多いのですが、大倉山青柳さんは、より細かいオブラートの粉末を好んで用いるのが特徴ですね。
製氷する技術が無かった時代には、冬場の凍った池から氷を切り出し、山中の涼しい場所に穴を掘り、夏まで氷を保存していました。この保管場所のことを氷室といいます。
そして、夏になると、少しずつ荷車に乗せて、ノンストップの特急便で都まで運び出していました。
出発地点で1メートル四方あった氷が、到着したころには溶けて数センチになっていたなんていう話もあります。
効率性や利便性とは対極にある氷室ですが、そこまで大変な思いをして得た真夏の氷は格別だったでしょうね。
古代の人が氷にかけたロマンに想いを馳せながらいただくと、涼しさもひとしおです。