「金魚(きんぎょ)」錦玉製:桔梗屋
金魚鉢をかたどった錦玉の中に、羊羹製の赤い金魚、煉切製の水草、小豆の小石を配したお菓子です。
美しい波形を描く波口の金魚鉢はプラスチック製の容器のように見えますが、鉢も中の水もすべて食べられる錦玉で作られています。
その証拠に、黒文字を入れてみると、金魚鉢ごと簡単に切ることができます。
色鮮やかな金魚が涼しげに水中をたゆたう姿を見ると、しばし蒸し暑さを忘れさせてくれますよね。
細長いひも状の水草は、小田巻という注射器のような道具を使って押し出して作られています。
錦玉の中に細かく散らばるように入っている気泡は偶然の産物ですが、かえってリアルな水の質感に貢献しています。
今回は同じお菓子を2個買いましたが、もうひとつの金魚鉢はまた異なった表情を見せてくれます。
金魚や水草、小石の配置が違うのはもちろんのこと、面白いのは表面に水紋が描かれている点です。
もう少し拡大してよく見てみましょう。
中の金魚が動くたびに、小さく波立つ水面の様子が絶妙に表現されていますね。
金魚は、フナの突然変異であるヒブナを観賞用に飼育し、交配を重ねていった結果生まれた、見て楽しむ魚です。
長い時間をかけて人工的に改良された、いわば「生きたアート」ですね。
この生きたアートを、和菓子の伝統技法を使って、「食べられるアート」へと昇華させた見事な逸品です。