「水仙巌の花(すいせんいわおのはな)」葛製:とらや
巌に砕ける波しぶきに見立てたお菓子です。黄色い葛の生地は、涼しさを誘うだけでなく、岩根に咲く黄色い花をも思わせます。慶安4年(1651)にはじめて創作されたお菓子です。
葛を水溶きして漉し、白ざらを入れて弱火でとかします。沸騰したら一気に熱湯を入れてかえし、湯を加えて粘りとかたさを調整しながら、黄色に着色し、透明に仕上げます。
葛種で白餡を包み、絞り布巾の上に置いて包み込み、上を藺草(いぐさ)でくくって冷やします。固まったら布巾をはずし、氷餅を3カ所につけ、完成です。
葛切は古くは「水繊(すいせん)」と呼ばれていました。この水繊はかつて黄色と白の短冊状の食べ物で、色合いが水仙の花色を思わせたことから水仙羹とも呼ばれていたそうです。
今でも葛粽を「水仙粽」と呼んだり、とらやの生菓子「水仙巌の花」「水仙常夏」などのように、葛粉を使った菓子に「水仙」を冠したりするのも、このためだといわれています。
水仙は冬の花で、冬のお茶菓子のテーマとしてよく登場しますが、夏の葛製のお菓子にこの「水仙」の名前が付くのは、こういう理由からだったんですね。