「せせらぎ」錦玉製:文銭堂本舗
錦玉の中に羊羹製の青紅葉と、焼き煉切製の枝を入れ、下の台はペパーミント入りの淡雪羹で作られています。
「せせらぎ」とは. 海や川の浅い場所を流れる水の音。また、その流れを表します。つまり、流れる水の音のことでもあるし、その音の出所である流れそのものでもあるという不思議な言葉です。
他の言葉に例えると、犬の鳴き声は「ワンワン」ですが、幼児語で「ワンワン」は犬そのものも表すというのと同じですね。
ですから、「せせらぎを聞きながら露天風呂に浸かる」でも「せせらぎを見ながら露天風呂に浸かる」 でも両方ありなのです。
いずれにしましても、目に見えない「音」を形に変えて、和菓子で表現するというのはとても興味深いですね。
上生菓子には他にも「虫の音(むしのね)」とか、「潮騒(しおさい)」「雨音(あまおと)」など、音にちなんだものがたくさんあります。
世界広しといえども、「音」をお菓子で表現するなんていうのは和菓子以外にはないのではないでしょうか?
しかも、「音」といっても、美しい楽器の音色や鳥のさえずりなどではなく、虫の音や、水の流れる音、雨が降る音など、欧米人にとっては雑音にしか聞こえない自然の音に対して情緒を感じ取り、お菓子として表現するというのは、日本人ならではの繊細な感性がなせる技でしょうね。