「雨あがり(あめあがり)」煉切製:花ごろも
緑と白にぼかし染めた煉切で小豆こし餡を包み傘をかたどり、煉切製の紫陽花を添え、黒文字を挿したお菓子です。
茶道をたしなむ方にはお馴染みの黒文字ですが、お菓子を食べやすい大きさに切ったり、挿して口元に運んだりするときに用いる高級楊枝のことです。これを傘の柄に見立てたのはグッドアイデアですね。
紫陽花がらの傘でしょうか。それとも梅雨の二大アイテム、紫陽花と雨傘をひとつのお菓子の中に同時に描いたものでしょうか。
いずれにせよ、梅雨の鬱陶しい気分を忘れさせてくれるような素敵な意匠のお菓子ですよね。
雨が傘のてっぺんからしみ込まないようにするために一番上の部分にかぶせられる「かっぱ」と呼ばれる小さな布があります。
これに見立て、褐色の煉切を柿のへたのような形に作って取り付けられているのがとてもリアルです。
この「かっぱ」の形からすると和傘のようです。
和菓子で表現する傘は、やはり洋傘よりも和傘が合いますね。
木や紙など、自然の素材を使って作られる和傘は、日本の梅雨の風景にうまく溶け込みます。
傘を写したお菓子は今まで3種類ほど紹介しましたが、いずれも開いた傘がモチーフになっていました。
「蛇の目(じゃのめ)」煉切製:一炉庵
「蛇の目傘(じゃのめがさ)」煉切製:村上
「五月雨(さみだれ)」煉切製:菊家
今回の傘は「雨あがり」の銘の通り、雨が止んですぼめた状態を表しているのがポイントですね。
子供の頃は、自分のお気に入りの傘をさしたり、長靴を履くこと自体が楽しみでしたし、舗装されていない道のあちこちにできた水たまりで遊んだり、普段見かけないカタツムリと対面したりと、雨は雨なりの魅力がありました。
それが今では、傘をさすのが面倒だったり、雨に濡れるのがいやで、雨の日の外出は憂鬱で億劫に感じます。
でも、こんな可愛らしいお菓子を見ると、久しぶりに童心に帰って、雨でもなんだか楽しめそうな気がしますね。