「鮎の塩焼き(あゆのしおやき)」練切製:栗山
白餡(手芒)を主原料とする煉切を黄色と緑色にぼかし染め、小豆漉し餡を包みます。手わざとへらを巧みに使って鮎の形を作り、バーナーで焼いて焼き目をつけます。砂糖をかけて焼き塩を表現しますが、背びれと尾びれには多めに付けて、化粧塩に見立てます。最後に串を刺し、笹をあしらって鮎の塩焼きの完成です。
鮎漁解禁にさきがけて作られる上生菓子です。あまりにもリアルで、グロテスクな姿に、ちょっと引いてしまう方もいるかもしれませんが、愛嬌あるどんぐり目と、分厚めの口がそれを和らげてくれています。
あとは、見た目と味のギャップにもとまどいますよね。本来ならお酒を飲みながら鮎料理に舌鼓を打つところですが、お抹茶を飲みながら、甘い鮎の塩焼きを食べている光景は笑えます。
材料が単純なので、甘味の調和をとるところにむずかしさがありますが、手作りの趣を感じる作品です。
激流にもまれ、ほっそりと引き締まった若鮎の姿はほんとうに美しいですね。
鮎は別名「香魚」とも呼ばれるように、川藻を食べて独特の青臭い風味になります。その香りを引き立てる為には、塩焼きが一番です。
特に一度天然鮎の香ばしさを経験してしまうと、肥満気味の養殖鮎はもう食べられなくなってしまいます。