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オリジナル木型による「菊」の上生菓子完成!

 

130年前に描かれた図案をもとにお菓子を作り、現代によみがえらせるプロジェクトが順調に進行中です。 

 

とらやさんにオートクチュールでお願いしていた「菊」のお菓子がついに出来上がりました! 

 

昨日は休日でしたが早起きして、赤坂店に受け取りに行ってきました。

 

 

老舗のロゴマークの入った包みに収められていると、それだけで特別感がありますね。 

 

当日の朝に作っていただいた、できたてのホヤホヤのお菓子です。

 

 

「特製生菓子」というラベルの表記も期待感を高めてくれます。

 

原材料名からもわかるように、とらやさんのこだわりで、合成着色料は一切使わず、天然色素のみで色付けされています。 

 

もちろん、保存料の類も入っていないので、消費期限は当日限りです。 

 

煉切生地は通常手芒豆に代表される白いんげん豆を使いますが、さすがとらやさん、贅沢に貴重な白小豆を使っています。 

 

包みを解くと、かっちり作られた高級菓子箱が登場します。

 

さらに、蓋を開けると、真っ白な和紙で上面が覆われていてすぐにはお目当てのものが見えない仕掛けになっています。

 

この和紙は、前後左右の四方向に開くようになっているので、一枚ずつ、わくわくしながらめくっていきます。

 

そして、ついに主役のお出ましです! 

 

 

さすが、今回は特に木型にこだわっただけあって、模様がくっきりと見事に浮かび上がっていますね。 

 

想像以上の完成度で、大感激です。 

 

平皿に盛り付けて、まずは遠景からじっくり眺めてみることに。

 

 

舞台の上でスポットライトを浴びて輝いている主演女優のようですね。

 

 

斜め上方向から見ると、上面はなだらかな弧を描くような優しい曲面になっています。 

 

真上から見て、原図と比べてみましょう。 

 

 

この出来栄えなら、原画を描かれた森 徳太郎さんにも満足していただけるんじゃないかと思います。 

 

こちらが、有名な木型職人、市原吉博氏に彫っていただいた木型です。 

 

(原図と比較しやすくするために画像変換ソフトで反転させています) 

 

今回のお菓子作りにおいて、一番要となるのがこの木型です。 

 

この道44年の名人の作だけあって、彫りがとても深く、煉切の色分けをする際にも、色がはみ出ることなく、とてもやりやすかったと、とらやの職人さんが誉めていました。 

 

お菓子の配色ですが、菊花の色は紅、ピンク、黄色の三色。しべは黄色。葉は緑色。生地は薄緑色と白のぼかしになっています。 

 

このデザインの特徴は、三方向から見た菊が描かれていることです。つまり、真上からと、真横からと、裏からの三方向です。 

 

まず、真上から見た紅菊。

 

真横から見た黄菊。

 

裏から見た薄紅菊。

 

このお菓子の陰の立役者は葉っぱです。 

 

 

リアス式海岸のように複雑に入り組んだ葉の造形は芸術的で惹かれるものがありますね。 

 

深くしっかりと彫り込まれた葉脈も美しく張り巡らされています。 

 

ではでは、いよいよ切り分けてみることにしましょう。 

 

断面を見ると、中においしそうなとらや特製の御膳餡がぎっしり詰まっていますね。

 

 

御膳餡とは小豆こし餡のことです。”高貴な人に供する上等な餡”という意味を込めて「御膳餡」と、とらやさんでは特別な呼び方をしているのです。 

 

 

そして、最後のお楽しみ、命名式です。 

 

・そのままズバリ、「菊」「菊花」 

 

・香りに注目して、「菊香」「菊香る」「菊の香」「菊薫る」 

 

・菊の生い茂る秋の路から、「菊路」 

 

・中国の伝説にちなんで、「菊慈童(きくじどう)」 

 

・いろいろな菊が描かれているので、「菊づくし」「菊三昧」「菊とりどり」 

 

・その優美な姿から、「菊の雅」 「菊の舞」「菊の彩」 

 

・重陽(ちょうよう)の節句にちなんで、「重陽」「菊の節句」「菊の宴(きくのえん)」「菊寿(きくじゅ)」「菊之寿(きくのことぶき)」「延命菊」 

 

・秋、菊の花が咲くころの好天気から、「菊日和(きくびより)」 

 

・菊の花言葉から、「高貴」「高潔」「高尚」 

 

 

たくさんあり過ぎて迷いますが、最終的に、こちらの銘となりました。

 

 

「菊華(きっか)」煉切製:上生菓子図鑑/とらや 

 

華=花であり、菊の花を意味するとともに、その華やかな色合いや、華麗な意匠にちなみ。また、お菓子にあやかり、華やかに繁栄できるようにとの願いを込めて。