上生菓子は四季折々の自然の風物を題材にしますが、今回はある記念のために、特別にピアノのお菓子を作ることになりました。
ピアノの象徴といえば鍵盤です。
一般的なピアノの鍵盤の数は88鍵もあります。
こんなに細長いものですから、全体を再現することはできません。
そこで、ドの音からシの音までの音階の基本単位を上生菓子用としてデザインすることにしました。
こちらが木型のデザインです。大きさは横60ミリ、縦35ミリ、厚さ20ミリ、重量40グラムの規格です。
木型の製作は、お馴染み、長野県の鈴木製作所にお願いし、約1週間で完成しました。
木型の図案は当然ながら左右が反転されています。
お菓子の制作ですが、こちらもすっかりお馴染みになりました、横浜・野毛の「もみぢ」さんに依頼しました。
白い煉切で小豆こし餡を包み、木型にてピアノの鍵盤をかたどり、黒鍵の部分に羊羹を貼り合わせたお菓子です。
お菓子らしくするために、黒鍵の部分はあえて黒くせず、小豆色にしました。
鍵盤特有の硬質な感じや、光沢感を出すために、黒鍵の部分は煉切ではなく、羊羹素材を用いたのがポイントです。
お菓子を横につなげるように並べるとさらにリアル感が増しますね。欲を言えば、黒鍵の幅をもう少し広くした方がよかったです。
手作りならではのばらつきや多少の歪み・凹凸はありますが、これはこれで味わい深いです。
私が生涯をかけて追求し続けている趣味はピアノです。
ピアノとの付き合いはもう50年近くになります。
とりわけショパンが大好きで、ショパン作曲のピアノ曲を全曲演奏するのが夢です。
現在、一曲ずつ録音・録画しては順番にYouTube上で発表しています。
ショパンのピアノ曲は約230曲あります。その中で最難関といわれるピアノ協奏曲第1番は私が中学生の頃から憧れ続けた名曲です。
演奏時間は約40分もかかる大曲で、技術的にも複雑なためプロのピアニストでも苦戦する難曲です。
ピアノ協奏曲というのは、ピアノとオーケストラの合奏ですから、正式には約50名から成るオーケストラの楽団員とともに、大ホールで演奏するものです。
アマチュア奏者にはとても無理な話です。
ですが、今は便利なものがあって、いろいろな楽器の音を本物そっくりに出せる音楽用のソフトがありますから、それをパソコンに入れて操作すれば、パソコンに大編成のオーケストラの演奏をやらせることができるのです。
今回はこのシステムを駆使して念願のピアノ協奏曲第1番(第1楽章)を完成することができました。
それを記念して、ピアノのお菓子を創ったわけです。
動画はこちらからどうぞ! ⇒ ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調(1楽章)
上生菓子のページで音楽の動画を紹介するのは心苦しいのですが、40年越しの夢がかなったので、大目に見てください(^^♪
さて、菓銘もいろいろ考えました。
そのままずばり、「ピアノ」「鍵盤」「洋琴」「piano」
色から、「白と黒」
音に関連して、「音色(ねいろ)」「音」「響」「調べ」
音楽に関連して、「メロディー」「旋律」「奏で」「コンチェルト」「和音」「和声」
最終的に、私が敬愛してやまないこのお方の名前を拝借することにしました。
「ショパン」煉切製:上生菓子図鑑/もみぢ